かぐらかのん

本や映画の感想などを書き記していくブログです。

社会学

訂正されるコミュニケーション--佐藤俊樹『社会学の新地平』

*「社会学」の誕生とマックス・ウェーバー 「社会という秩序はいかにして可能になるか」を考察する「社会学」という学問は19世紀に始まりました。18世紀末に起きたフランス革命はヨーロッパの知識人に二つの革命的な考え方をもたらしました。第一に政治体制…

「逆張り」は脱構築の夢を見るか--綿野恵太『「逆張り」の研究』

*「逆張り」の諸相 もともと「逆張り」とは株式相場の流れに逆らって売買する投資手法を指す言葉でした。例えば「投資の神様」と呼ばれるウォーレン・バフェットは逆張り(コントラリアン)で知られています。彼は2009年のリーマンショックでは経営危機に陥…

資本主義リアリズム・再生産未来主義・それでも〈未来〉を語るということ--木澤佐登志『失われた未来を求めて』

* 資本主義リアリズムという病理 今日の現代思想シーンにおいて大きな潮流を形成する「加速主義」の代表的論客の一人としても知られるイギリスの批評家マーク・フィッシャーはその主著『資本主義リアリズム』(2009)において現代を席巻するグローバル資本…

クィア・スタディーズの基本概念とアンチ・ソーシャル的転回について

* クィア・スタディーズとLGBTQ クィア・スタディーズとは性の多様性を考察する比較的新しい学問領域であり、とりわけセクシュアルマイノリティ(性的少数者)に関する論点を多く扱います。周知の通りセクシュアルマイノリティは近年において「LGBTQ」とい…

終わりなき日常と終わりある日常

" data-en-clipboard="true"> " id="終わりなき日常特異点としての1995年">* 終わりなき日常--特異点としての1995年 阪神大震災と地下鉄サリン事件に象徴される1995年は奇しくも戦後50年を迎えた日本社会においてポストモダン状況がより一層加速した年と…

戦後日本史における第三者の審級

* 現実と反現実 我々の生きる「現実」とは、何らかの「現実ならざるもの」を参照した「意味の秩序」として構成されています。この「現実ならざるもの」を社会学では「反現実」と呼びます。この点、戦後社会学を牽引した見田宗介氏によれば「現実」という言…

日常から世界を問い直すということ--「遅いインターネット(宇野常寛)」

遅いインターネット (NewsPicks Book) 作者:宇野常寛 発売日: 2020/02/19 メディア: Kindle版 * 走りながら考える本 1995年以降の日本社会においては「大きな物語の失墜」と呼ばれるポストモダン状況がより加速したと言われています。「大きな物語」という…

【書評】社会学入門(見田宗介)

社会学入門--人間と社会の未来 (岩波新書) 作者: 見田宗介 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2014/12/18 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る * 「あいだ」を照らし出す 本書は社会学とは「関係の学」としての人間学であるといいます。社会…

動物・不可能・拡張現実

社会学入門 人間と社会の未来 (岩波新書) 作者: 見田宗介 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2014/12/18 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る * 「現実」と「反現実」 個人が「私は私である」「私はここにいる」という生のリアリティを獲得する…

消費と情報の彼方、コンサマトリーな生、瑞やかな歓び。

現代社会の理論?情報化・消費化社会の現在と未来 (岩波新書) 作者: 見田宗介 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2018/08/16 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る * 「見はるかす」ということ 20世紀を代表するアメリカの神学者、ラインホールド…

「ここではない、どこか」から「いま、ここ」へ

人はその想像力をもって世界を照らし出し、自分なりの物語を創り出すことによって「私は私である」「私はここにいる」という生のリアリティを獲得します。 すなわち、人が生きていく上でどういった想像力を参照するかは大きな問題です。では、現代を生きるた…

発達障害から「普通」を問い直す--私たちは生きづらさを抱えている(姫野桂)

私たちは生きづらさを抱えている 発達障害じゃない人に伝えたい当事者の本音 作者: 姫野桂 出版社/メーカー: イースト・プレス 発売日: 2018/08/23 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る * 発達障害の「現場」を読み解く試み 本書は十数名に及ぶ…