かぐらかのん

本や映画の感想などを書き記していくブログです。

2025-02-01から1ヶ月間の記事一覧

〈グレート・ゲーム〉の外部に立つということ--逢坂冬馬『同志少女よ、敵を撃て』

* 全体主義の起源と〈グレート・ゲーム〉 20世紀を代表する政治哲学者であるハンナ・アーレントは1951年に公刊した大著『全体主義の起源』においてヨーロッパの国民国家の一部が19世紀の帝国主義を経て、20世紀の全体主義を形成していくそのメカニズムを考…

映画における神話と倫理

* 映画への希望と失望 かつて「映画は世界の認識を変える」と素朴に信じられた時代がありました。リュミエール兄弟が1895年にシネマトグラフを公開して以降、ある時期までのフランスでは「映画」という新時代のメディアは従来の時空間の観念を変容させ、伝…

九鬼周造と現代思想の倫理

*〈父〉と〈母〉の分裂 日本哲学を代表する哲学者の一人である九鬼周造は1988年(明治21年)に男爵九鬼隆一の四男として東京に生まれました。九鬼家の祖先は戦国時代に伊勢志摩を本拠として活躍した伊勢水軍です。周造の父、九鬼隆一は1852年(嘉永5年)の…