かぐらかのん

本や映画の感想などを書き記していくブログです。

2025-05-01から1ヶ月間の記事一覧

散歩・訂正・創造性--ユリイカ2024年6月号『特集=わたしたちの散歩』

* 散歩と創造性 古代ギリシアの哲学者アリストテレスがアテナイ郊外に創設した「リュケイオン」という学園に属する学派は「逍遥学派」と呼ばれています。「逍遥」などというとなんだか難しく聞こえますが、つまるところ「散歩」のことです。アリストテレス…

「問題」としての文学--仁平千香子『読めない人のための村上春樹入門』

* 村上春樹はむずかしい? いまさらいうまでもないことかもしれませんが、現代日本人作家の中で村上春樹氏ほど特異な存在感を放つ作家はいないでしょう。発行部数1300万部のベストセラー『ノルウェイの森』(1987)をはじめとして『羊をめぐる冒険』(1982…

教養主義の没落と教養の回帰--竹内洋『教養主義の没落』

*「読書」における「教養」 昨年のベストセラーとなり今年度の新書大賞を受賞した三宅香帆氏による『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』(2024)は近代日本社会の「読書」と「労働」の関係を俯瞰した上で現代において「読書」は「労働」にとっての「ノ…