かぐらかのん

本や映画の感想などを書き記していくブログです。

2024-06-01から1ヶ月間の記事一覧

ケアの倫理と再生産的未来主義--多和田葉子『献灯使』

* 文学におけるケアの倫理 一般的に「ケア」とは子ども、高齢者、障害者、病人などに対する世話、気遣い、介助、介護、看護といったことを指す言葉であり、多かれ少なかれケアされる側の依存とニーズが伴うものです。そのため自律的な市民を要請する近代リ…

母娘関係の脱構築--三宅香帆『娘が母を殺すには?』

*〈母〉なるものという病理 臨床心理学者の河合隼雄氏は『母性社会日本の病理』(1976)において、ある社会や文化の持つ特性は父性原理と母性原理という相対立する二つの原理のバランスの取り方に規定されているとして当時、急増しつつあった登校拒否症やわ…

正解なき問いを考えるために--北出栞『「世界の終わり」を紡ぐあなたへ』

*〈セカイ系〉という想像力 ゼロ年代初頭のオタク系文化において一世を風靡した〈セカイ系〉という言葉があります。この言葉が初めて公に用いられたのは2002年10月31日、ウェブサイト「ぷるにえブックマーク」の掲示板に投稿された「セカイ系って結局なんな…