かぐらかのん

本や映画の感想などを書き記していくブログです。

2025-06-01から1ヶ月間の記事一覧

ポストモダンにおける永遠回帰の命法--舞城王太郎『九十九十九』

* 動物の時代における人間の条件 東浩紀氏の代表的著作である『動物化するポストモダン』(2001)の続編である『ゲーム的リアリズムの誕生』(2007)は一般的に当時のオタク系文化を席巻していたライトノベルや美少女ゲームについて論じた著作であるとされ…

世界を映すスクリーンとしての「風味」--三浦哲哉『自炊者になるための26週』

*「おいしい」の美学 人間の感性という領域を扱う哲学である美学において食事をして「おいしい」と感じる感性は従来周縁的なものに位置付けられていました。そもそも近代哲学において味覚や嗅覚、または触覚という感覚は「低級感覚」と呼ばれ「高級感覚」と…

近代美学と日常美学--井奥陽子『近代美学入門』×青田麻未『「ふつうの暮らし」を美学する』

* 美学とは何か 「美学」とは美や芸術について考える哲学です。「美学」という学問は18世紀のヨーロッパで誕生し、日本には明治時代に、そのほかの西洋文化とともに流入してきました。「美学」という言葉はその原義に立ち返ると「感性の学」を意味していま…