かぐらかのん

本や映画の感想などを書き記していくブログです。

文芸

「リトル・ピープルの時代(宇野常寛)」〜「いま、ここ」に深く潜る想像力。

リトル・ピープルの時代 (幻冬舎文庫) 作者: 宇野常寛 出版社/メーカー: 幻冬舎 発売日: 2015/05/08 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る * はじめに 「ゼロ年代の想像力」で一世を風靡した気鋭の批評家、宇野常寛氏が震災直後の2011年7月に世に…

「母性のディストピア(宇野常寛)」〜戦後日本の病理構造とサブカルチャーの共時的布置を読み解く一冊

母性のディストピア (集英社文芸単行本) 作者: 宇野常寛 出版社/メーカー: 集英社 発売日: 2017/11/24 メディア: Kindle版 この商品を含むブログ (1件) を見る * はじめに 本書は宮崎駿、富野由悠季、押井守という戦後アニメーションを築きあげた巨匠達の仕…

「若い読者のためのサブカルチャー論講義録(宇野常寛)」〜いま、サブカルチャーにできること。

若い読者のためのサブカルチャー論講義録 作者: 宇野常寛 出版社/メーカー: PLANETS/第二次惑星開発委員会 発売日: 2018/03/28 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る * 抑圧されたネオテニーの補償作用としてのサブカルチャー 漫画やアニメはよ…

「今、ここ」を味わい尽くすということ--日日是好日〜『お茶』が教えてくれた15のしあわせ(森下典子)

。 日日是好日―「お茶」が教えてくれた15のしあわせ (新潮文庫) 作者: 森下典子 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2008/10/28 メディア: 文庫 購入: 13人 クリック: 39回 この商品を含むブログ (37件) を見る * 「お茶」の持つ底なしの深み 本書は著者の森…

少女の内閉期の「おはなし」--かがみの孤城(辻村深月)

かがみの孤城 作者: 辻村深月 出版社/メーカー: ポプラ社 発売日: 2017/06/02 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る * はじめに 本年の本屋大賞受賞作「かがみの孤城」は、アニメ的/ゲーム的リアリズムによる世界観を持ちつつも、現代の子供達が…

「終わりある日常」を生きるということ--君の膵臓をたべたい(アニメ版)

劇場アニメ「君の膵臓をたべたい」 Original Soundtrack アーティスト: 劇場アニメ「君の膵臓をたべたい」 出版社/メーカー: アニプレックス 発売日: 2018/08/29 メディア: CD この商品を含むブログを見る * 「瑞々しいもの」として回帰する「セカイ系的想…

「ゼロ年代の想像力(宇野常寛)」〜「小さな物語」をどう生きるのか

ゼロ年代の想像力 作者: 宇野常寛 出版社/メーカー: 早川書房 発売日: 2013/05/09 メディア: Kindle版 この商品を含むブログ (2件) を見る * はじめに 現代はポストモダンの時代と言われます。ポストモダンとは「大きな物語」が機能しなくなった社会状況を…

「セカイ系」というゆりかご

* はじめに 「セカイ系」という言葉をご存知でしょうか?「セカイ系」とはゼロ年代初頭のサブカルチャー文化圏を特徴付けるキーワードの一つです。次の3つの作品が典型的なセカイ系作品と言われています。 ⑴「最終兵器彼女」 最終兵器彼女(1) (ビッグコ…

「AIR」における日本的「あわれ」の感性

「AIR」というノベルゲームはご存知でしょうか?ゲームブランドKeyより2000年に発売され、このジャンルとしては異例の売上本数を記録した「泣きゲー」の代名詞です。 今日は本作のヒロイン、神尾観鈴ちゃんの命日なので少しAIRの事を書いておこうと思います…

ポストモダンは物語の夢を見るか?

ポストモダンというのは結局のところ、何なのでしょうか?久しぶりに「動物化するポストモダン」を読み返していました。本書は「オタク」と呼ばれるサブカル系消費者の行動様式から「ポストモダン的主体」とは何かを考察していきます。 動物化するポストモダ…

「羊と鋼の森(宮下奈都)」の感想。「生きられなかった半面」を生きていくということ。

調律はまず49番目のラの音を440ヘルツに合わせるところから始まります。 そして、それを基準として12の音階を88の鍵盤に割り振っていく。 ただ、調律が普通の家電製品のメンテナンスとは明確に違うのは顧客の求める「理想の音」というのが顧客の数だけ無数に…

「批評理論入門(廣野由美子)」を読む。批評という「〈他者〉の物語」の中に「〈私〉の物語」を見出す営み。

批評理論入門 『フランケンシュタイン』解剖講義 (中公新書) 作者: 廣野由美子 出版社/メーカー: 中央公論新社 発売日: 2014/07/11 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る * 「読む」ということ、「語る」ということ。 小説の読み方には、文字通り…

いろいろな「好き」の共生。「愛されたい」と「愛している」の違い。--カードキャプターさくら(CLAMP)

「カードキャプターさくら」という作品はご存知でしょうか?1996年から2000年まで「なかよし」に連載され、本来の読者層である小中学生女子のみならず幅広い層を熱狂させ、その一世を風靡。その後も人気は全く衰える事が無いどころか、年を追うごとに着実に…

無意識と格闘するということ--昔話の深層(河合隼雄)

本書は「ヘンゼルとグレーテル」「いばら姫(眠れる森の美女)」といった、あのグリム童話の数々をユング心理学の視点で鮮やかに読み解いていく目から鱗のグリム童話解説です。 河合隼雄先生といえば、面白エッセイストとか対談の名手、あるいは文化庁長官と…

「君の膵臓をたべたい(住野よる)」を読む。生の欲望と出会い損ないの物語。

原作が出た時、満開の桜の表紙と猟奇的なタイトルの不思議な組みあわせに少し心惹かれましたが、その時は結局読まず終い。ただずっと気にはなっていた作品でしたので、今夏に公開された映画をきっかけに原作の方も手を出してみました。 12年後の【僕】が物語…