かぐらかのん

本や映画の感想などを書き記していくブログです。

2023-01-01から1年間の記事一覧

自傷的自己愛と青春コンプレックス--ぼっち・ざ・ろっく!(はまじあき)

" data-en-clipboard="true"> * 日常系という想像力 「日常系」と呼ばれる作品群は多くの場合は4コマ漫画形式を取り、そこでは主に10代女子のまったりとした何気ない日常が延々と描かれます。ここで描き出されるのはいわば作品世界の「空気」そのものであり…

平和で安全で清潔で優しい社会の虚構と現実--リコリス・リコイル

" data-en-clipboard="true"> * 管理社会の未来 フランス現代思想におけるポスト構造主義を代表する思想家ミシェル・フーコーは知と権力の関係を分析した『性の歴史1-知への意志(1976)』において従来型の権力形態である「規律権力」の傍らに、新たな権力…

神なき時代における正義の在り処--罪と罰(ドストエフスキー)

* 危機の時代の作家 時は19世紀、当時のロシアでは「農奴制」という従来の社会構造が徐々に軋みを上げ始め、1825年のデカブリスト事件や1949年のペトラシェフスキー事件に象徴されるように社会全体に不穏な空気がみなぎっていました。 1861年、急速に近代化…

「つながり」よりさらに深いところで--かがみの孤城(辻村深月)

" data-en-clipboard="true"> * ゼロ年代の想像力から考える--バトルロワイヤル状況とつながりの思想 宇野常寛氏はそのデビュー作「ゼロ年代の想像力(2008)」において、2001年前後から米同時多発テロや小泉政権が主導した新自由主義的構造改革といった…

理想の時代における実存文学--されどわれらが日々-(柴田翔)

" data-en-clipboard="true"> * 全共闘世代のバイブル 戦後の日本文学史はまず終戦直後に登場した第一次・第二次からなる「戦後派」と呼ばれる作家達が現れるところから始まります。この「戦後派」と呼ばれる作家達の特色は、例えば戦場とか投獄といった極…

パラノ・ドライブとスキゾ・キッズ

" data-en-clipboard="true"> * ニュー・アカデミズムの起爆剤としての「構造と力」 日本経済が空前のバブル景気へ向かいつつあった1983年9月、勁草書房という人文系出版社から一冊の本が出版されました。タイトルは「構造と力」。著者は浅田彰。当時、京都…