かぐらかのん

本や映画の感想などを書き記していくブログです。

2022-06-01から1ヶ月間の記事一覧

様々な「正義」の泡立ちの中で--流浪の月(凪良ゆう)

" data-en-clipboard="true"> 流浪の月 (創元文芸文庫) 作者:凪良 ゆう 東京創元社 Amazon " data-en-clipboard="true"> *「常識」という名の予断と偏見 言うまでもなく小説には「語り手」が必要です。読者はあくまで語り手の描写や解説を通じて小説世界内…

村上春樹作品における母的ヒロインと娘的ヒロイン--女のいない男たち(村上春樹)

* 性別化の式とファルス関数 精神分析における「男性」とは基本的に「去勢」された存在であるとされています。この点、フランスの精神分析家、ジャック・ラカンはその晩年において次のような「性別化の式」と呼ばれる男女のセクシュアリティに関する図式を…

【書評】成熟と喪失(江藤淳)

* 戦後派文学から第三の新人へ 昭和20年8月15日、約3年9ヶ月にわたる太平洋戦争は連合国に対する日本の無条件降伏によって終結しました。その後、GHQによる占領諸政策の下、終戦から昭和20年末までの僅か4ヶ月半の間で、日本国内における主要な論調は「皇国…