構造主義は、実存主義との対比という文脈で語られることが多く、その場合「構造主義=文化相対主義」といった観を呈してますが、これはレヴィストロースが構造主義を文化人類学に適用した結果であって、そもそもの構造主義とは、ある現象を現象たらしめている「構造」、つまり、構成諸要素相互の関係性を解析するという思考様式ないし手続的方法論なのであって、そこに何か特定の実体的思想があるわけではないんですよね。
もともとそういう掴み所の無いものですから、上記のモヤモヤ感は当たり前の感覚です。
そういうわけで構造主義とはどういうものかを知るのは、構造主義者と呼ばれる人たちの具体的なお仕事ぶりを通じて、各論的に知るのが一番手っ取り早いわけです。構造主義を文化人類学に適用したのがレヴィストロースだとすれば、構造主義を歴史学に適用したのがフーコー、構造主義を文芸批評に適用したのがバルト、構造主義を精神分析に適用したのがラカン。
困ったことにこの人たち自体が揃いも揃って音に聞く難物ばかりですが、彼らのお仕事をまとめて横断的にざっくりと知ることができるのが本書です。
文章はとても読みやすく、Kindle版だとマーカーも簡単に弾けるので、これだと確かに「寝ながら学べる」というのはあながちウソではないです。
構造主義者の多彩な仕事を見れば分かる通り、構造主義とは様々な領域に適用できる広い汎用性を持っているわけです。いってみれば、構造主義的デートプランとか、構造主義的麻婆豆腐というのも有りえなくもない。何はともあれ柔軟な思考力の開発という意味でも読んでおいて損はない一冊です。