かぐらかのん

心理学関連書籍、ビジネス書、文芸書の書評などを書いていきます。

書評

悦びと生成変化のあいだ--「ドゥルーズ 流動の哲学(宇野邦一)」

ドゥルーズ 流動の哲学 [増補改訂] (講談社学術文庫) 作者:宇野邦一 発売日: 2020/02/10 メディア: Kindle版 * バランスの良いドゥルーズ哲学入門書 1960年代、フランス現代思想のトレンドは「実存主義」から「構造主義」へと変遷しました。レヴィ=スト…

「憐れみ」によって手を取り合うということ--「テーマパーク化する地球(東浩紀)」

テーマパーク化する地球 ゲンロン叢書 作者:東 浩紀 発売日: 2019/06/14 メディア: Kindle版 *「観光客の哲学」の舞台裏あるいは実践録 1990年代後半以降、日本社会においては「大きな物語」の失墜と呼ばれるポストモダン状況がより加速したと言われていま…

別の〈わたし〉を見つけるために--「一人称単数(村上春樹)」

一人称単数 (文春e-book)作者:村上 春樹発売日: 2020/07/18メディア: Kindle版 * 倍音を出す技術 フランス文学者の内田樹氏は村上春樹氏を「倍音を出す技術を知っている作家」であると評しています。「倍音」とは基本周波数の整数倍の周波数の音のことであ…

物語と文体の間--「みみずくは黄昏に飛び立つ(川上未映子・村上春樹)」

みみずくは黄昏に飛びたつ―川上未映子 訊く/村上春樹 語る―(新潮文庫) 作者:川上未映子,村上春樹 発売日: 2020/05/01 メディア: Kindle版 *「こちら側」と「あちら側」 臨床心理学者、河合隼雄氏はこころの病を癒す上で大切な事は「各人の生きている軌跡…

環境の外側に立つということ--「人はみな妄想する-ジャック・ラカンと鑑別診断の思想-(松本卓也)」

人はみな妄想する -ジャック・ラカンと鑑別診断の思想- 作者:松本卓也 発売日: 2015/04/24 メディア: 単行本 * 実存主義から構造主義へ 1960年代、フランス現代思想のトレンドは「実存主義」から「構造主義」へと変遷しました。ジャン=ポール・サルトルに…

行動療法の現在--「はじめてまなぶ行動療法(三田村仰)」

はじめてまなぶ行動療法 作者:三田村仰 発売日: 2018/09/06 メディア: Kindle版 * 行動療法と認知行動療法 現代心理療法シーンにおける主流を占める行動療法・認知行動療法の歴史は大まかに3つの世代に分けられます。 1950年代、南アフリカで戦争神経症の治…

二層構造の時代における新たな公共性--「哲学の誤配(東浩紀)」

哲学の誤配 ゲンロン叢書 作者:東 浩紀 メディア: Kindle版 * 二層構造の時代における哲学 1994年、かつての「ニューアカデミズム」を牽引した浅田彰氏と柄谷行人氏が編集委員を務める「批評空間」第Ⅱ期第3号に「幽霊に憑かれる哲学--デリダ試論」と題さ…

対話による「新しい現実」の創出--「オープンダイアローグがひらく精神医療(斎藤環)」

オープンダイアローグがひらく精神医療 作者:斎藤 環 発売日: 2019/08/23 メディア: Kindle版 * オープンダイアローグとは何か フィンランドの西ラップランド地方トルニオ市にあるケロプダス病院のスタッフを中心に開発された「オープンダイアローグ(OD)…

スパイスカレーを知る上での新基準--「私でもスパイスカレー作れました!(印度カリー子・こいしゆうか)」

私でもスパイスカレー作れました! 作者:こいしゆうか,印度カリー子 発売日: 2019/06/07 メディア: Kindle版 * スパイスカレーの教科書 「何十種ものスパイス調合」「工程が複雑」「料理上級者向け」「普通はお店で食べるもの」等々。何かと敷居の高さを感…

イロニーからユーモアへの折り返し--「動きすぎてはいけない(千葉雅也)」

動きすぎてはいけない ジル・ドゥルーズと生成変化の哲学 (河出文庫) 作者:千葉雅也 発売日: 2017/09/15 メディア: Kindle版 * 生成変化の哲学 1960年代、フランス現代思想のトレンドは「実存主義」から「構造主義」へと変遷しました。実存主義とはジャン=…

日常から世界を問い直すということ--「遅いインターネット(宇野常寛)」

遅いインターネット (NewsPicks Book) 作者:宇野常寛 発売日: 2020/02/19 メディア: Kindle版 * 走りながら考える本 1995年以降の日本社会においては「大きな物語の失墜」と呼ばれるポストモダン状況がより加速したと言われています。「大きな物語」という…

「思考する快楽」としての勉強--「勉強の哲学(千葉雅也)」

勉強の哲学 来たるべきバカのために 増補版 (文春文庫) 作者:千葉 雅也 発売日: 2020/03/10 メディア: Kindle版 * 「勉強」と「生活」は表裏の関係 我々は社会生活を送る上で多かれ少なかれ「勉強」をしています。入学試験や資格試験など、わかりやすい「勉…

「世界の果て」と「世界の片隅」--「最終兵器彼女1〜7(高橋しん)」

最終兵器彼女(1) (ビッグコミックス) 作者:高橋しん 発売日: 2013/07/15 メディア: Kindle版 最終兵器彼女(7) (ビッグコミックス) 作者:高橋しん 発売日: 2013/07/15 メディア: Kindle版 * 「セカイ系」の原点にして頂点 1995年以降の日本社会におい…

「空気」の外側に立つということ--「原子力時代における哲学(國分功一郎)」

原子力時代における哲学 作者:國分功一郎 発売日: 2019/10/04 メディア: Kindle版 * 「Atoms for Peace」 1950年代とはいうまでもなく「核兵器の恐怖」が世界を支配した時代でした。1949年にはアメリカに続き旧ソ連も原爆を保有したことが公にされ、これに…

幸福の彼方と此方--「創造と狂気の歴史(松本卓也)」

創造と狂気の歴史 プラトンからドゥルーズまで (講談社選書メチエ) 作者:松本卓也 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2019/03/12 メディア: Kindle版 * 「創造と狂気」の関係を問う 優れた芸術作品やイノベーションがしばし「クレイジー」と形容されるように…

「居場所」を見出すということ--「この世界の片隅に(こうの史代)」

この世界の片隅に 発売日: 2017/04/26 メディア: Prime Video * 綿密に描き出される戦時下の日常 こうの史代さんという人は元々はかわいい女の子のゆるい日常を描く「萌えショートストーリー」のようなものが描きたくて漫画家なったらしく、本作も形式こそ4…

否定神学の特異点--「意味がない無意味(千葉雅也)」

意味がない無意味 作者:千葉雅也 出版社/メーカー: 河出書房新社 発売日: 2018/10/26 メディア: 単行本 * 〈意味がある無意味〉と〈意味がない無意味〉 「勉強の哲学」で一世を風靡したかと思えば「デッドライン」で野間文芸新人賞を受賞。自己啓発本から文…

コミットメントのコストをいかに処理するか--「1Q84(村上春樹)」

1Q84 BOOK 1 作者: 村上春樹 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2009/05/29 メディア: 単行本 購入: 45人 クリック: 1,408回 この商品を含むブログ (1247件) を見る 1Q84 BOOK 2 作者: 村上春樹 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2009/05/29 メディア: 単行本…

享楽のピアノとコンステレーションの物語--「蜜蜂と遠雷(恩田陸)」

蜜蜂と遠雷 作者: 恩田陸 出版社/メーカー: 幻冬舎 発売日: 2016/09/23 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (61件) を見る * 読むコンサート 第156回直木賞、第14回本屋大賞受賞作。7年以上に渡る連載中は全く話題にならず、おまけに度重なる取材によっ…

交響とルールのあいだ--「社会学入門(見田宗介)」

社会学入門--人間と社会の未来 (岩波新書) 作者: 見田宗介 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2014/12/18 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る * 「あいだ」を照らし出す 本書は社会学とは「関係の学」としての人間学であるといいます。社会…

【読書】「『ひと』として大切なこと(渡辺和子)」--置かれた場所で咲くための「人格論」講義

「ひと」として大切なこと PHP文庫 作者: 渡辺和子 出版社/メーカー: PHP研究所 発売日: 2013/06/07 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る * あの伝説の「人格論」講義を完全収録 かの200万部のベストセラー「置かれた場所で咲きなさい」をお読み…

【読書】「風の帰る場所(宮崎駿)」〜「綺麗な嘘」を全力で吐くということ

風の帰る場所 ナウシカから千尋までの軌跡 作者: 宮崎 駿 出版社/メーカー: 文藝春秋 発売日: 2013/12/27 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る * ニヒリズムとヒューマニズムの再接続 「その底知れない悪意とか、どうしようもなさとかっていうの…

再起動するセカイ〜「イリヤの空、UFOの夏」から考える。

イリヤの空、UFOの夏 その1 (電撃文庫) 作者: 秋山瑞人 出版社/メーカー: KADOKAWA 発売日: 2014/03/26 メディア: Kindle版 この商品を含むブログ (2件) を見る * 「セカイ系」なるもの 新海誠監督の最新作「天気の子」の公開を機に最近再びそこらかしこで…

「観光客の哲学(東浩紀)」〜「二層構造の時代」を生きるということ

ゲンロン0 観光客の哲学 作者: 東浩紀 出版社/メーカー: 株式会社ゲンロン 発売日: 2017/12/11 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る * 「観光客」とは何か かつての「オタクの批評家・東浩紀」というイメージからはなんとも程遠いタイトルですが…

「イエスタデイをうたって1〜11(冬目景)」〜自己変革と愛の讃歌

イエスタデイをうたって 1 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL) 作者: 冬目景 出版社/メーカー: 集英社 発売日: 2014/07/18 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る * ゆるやかな空気感の中で展開される恋愛群像劇 冬目景さんの不朽の名作「イエスタ…

消費と情報の彼方、コンサマトリーな生、瑞やかな歓び。

現代社会の理論?情報化・消費化社会の現在と未来 (岩波新書) 作者: 見田宗介 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2018/08/16 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る * 「見はるかす」ということ 20世紀を代表するアメリカの神学者、ラインホールド…

「人生がときめく片づけの魔法・改訂版(近藤麻理恵)」〜「ときめき」に耳を傾けるということ

* 「一気」に「短期」に「完璧」に あの片付け本のベストセラーが今年改訂版となって帰ってきました。片づけが苦手な方はこの機会に一読してみるのも良いでしょう。 実は本書はずっと以前、初版の方を読ませていただいたことがあるんですが、その時には「し…

「私が語り伝えたかったこと(河合隼雄)」〜物語を紡ぎ出す力

私が語り伝えたかったこと (河出文庫) 作者: 河合隼雄 出版社/メーカー: 河出書房新社 発売日: 2017/03/31 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る * はじめに 我が国の臨床心理学の礎を築いた知の巨人、河合隼雄氏の思索の軌跡をまとめた一冊です…

「私たちは生きづらさを抱えている(姫野桂)」〜発達障害から「普通」を問い直す

私たちは生きづらさを抱えている 発達障害じゃない人に伝えたい当事者の本音 作者: 姫野桂 出版社/メーカー: イースト・プレス 発売日: 2018/08/23 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る * 発達障害の「現場」を読み解く試み 本書は十数名に及ぶ…

「凡人として生きるということ(押井守)」〜「欲望の本質」を見極めるという倫理。

凡人として生きるということ 作者: 押井守 出版社/メーカー: 幻冬舎 発売日: 2013/05/31 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る * はじめに 「ビューティフル・ドリーマー」「パトレイバー」「攻殻機動隊」「イノセンス」「スカイクロラ」など、ア…