副題に「最強の教科書」と銘打っているように、そろそろ、健康診断の数値が気にはなり出したが、食生活のどこから改善すればいいのか皆目見当もつかないという向きには一読する価値があるでしょう。
* ぽっこりお腹の正体
肥満が万病のもとであることはいうまでもありません。ある疫学調査によればBMIが5%上昇するごとに心疾患系の死亡リスクが49%、呼吸器疾患の死亡リスクが38%、がんの死亡リスクが19%増加するとされています。
そして本書は肥満の原因はひとえに糖質の過剰摂取にあるといいます。
太る原因というと脂質の取り過ぎのようなイメージがありますが、脂質はかなりの部分が吸収されずに排出されるそうです。
これに対して、糖質は体内で100%吸収されます。人の体は生命維持のため、糖質を取り込むようにできているわけです。
体内に摂取された糖質は小腸でブドウ糖に分解され血液中に現れます。この時、血糖値が上昇します。
血糖値が上昇したことを察知した体は、それを下げるため慌てて膵臓からインスリンというホルモンを放出します。インスリンは余剰ブドウ糖をグリコーゲンに変え、肝臓や筋肉の細胞に取り込むことで血糖値を下げます。
この点、脂質やタンパク質は血糖値に影響を与えません。ゆえに本書は病気や不調の9割以上は「血糖値の問題=糖質の過剰摂取」にあるといっても過言ではないといいます。
* 老化を促進する「AGE」
さらに本書は糖質の過剰摂取は老化の原因にもなるといいます。
タンパク質や脂質がブドウ糖と結合することでAGE(Advanced Glycation End Products=終末糖化産物)という劣化物質が作り出される。この反応を「糖化」といいます。
老化の原因としては「酸化」がよく知られているでしょう。酸化とは体が「錆びる」状態であるのに対して、糖化とは体が「焦げる」状態をいいます。
この「糖化」という事象は「酸化」に比べてあまり知られていませんが、「酸化」以上に老化を促進させるのがこの「糖化」である、ということです。
例えば、皮膚のコラーゲンが変性して劣化すれば、シワやシミがつくり出されてしまいます。あるいは、血管のタンパク質を変性させれば固く切れやすくなり、動脈硬化が進行します。
* 肉ならいくらでも食べても良いというわけではない
このように糖質の過剰摂取を戒めるのが本書の総論的な骨子をなしています。かといって、よくある糖質制限の誤解のように肉ならいくらでも際限なく食べてもいいというわけではないのはいうまでもありません。
肉類に多く含まれる飽和脂肪酸は常温で固体になる性質があり、人の体内でもそれは同様です。
つまり、肉類を過剰摂取すれば血液ドロドロ状態になってしまい、これはこれで心筋梗塞や大腸がんなどまた別のリスクを生み出すわけです。
また、ソーセージやベーコンなどの加工肉にはそのほとんどに亜硝酸塩という発色剤が使用されており、これには発がん性があることがはっきりわかっています。
* 結局はバランスが大事
結局、食生活で肝要な事は「多品目をバランスよくこまめに摂る」という大前提があり、そのバランスの中のどこに重きを置くのかという話なのでしょう。
本書がお勧めする食品群、とりわけ豆類、きのこ類、海藻類、酢、オリーブオイルなどは意識して日々の食事に取り入れて行きたいところです。
もっとも本書で示されている知見は現時点での到達点であり、食の常識は刻一刻と変化しています。これからも日々、情報のアップデートが必要不可欠なのはいうまでもないことです。