かぐらかのん

心理学関連書籍、ビジネス書、文芸書の書評などを書いていきます。

「こころの天気図(河合隼雄)」を読む。ふんわり受け止めるということの難しさ。

 
 
長らく絶版本だったが今年装いを新たに復刻。かの名著「こころの処方箋」のアンサーソング的な立ち位置のエッセイ集ですが、こちらは聞き書きスタイルなので何ともふんわりとした優しい語り口に仕上がっています。
 
著者は言わずと知れた生粋のユング派分析家ですが、ユングのユの時も知らなくとも普通に良質な自己啓発本として読めます。けれども心理療法の知識素養が多少なりともあれば、また違った読み方もできて味わい深い。
 
むしろ巷の心理療法の専門書などでは学術的正確性などの諸々の問題などから、なかなかぶっちゃけて書けない「理論体系の舞台裏」のようなものを詳らかにしているのが本書であるという言い方もできる。
 
例えば、「中心を外さず、ずっとそばにいる(217頁)」「『ふーん』の難しさ、素晴らしさ(213頁)」「自分が不安定なほど、相手を詮索する(216頁)」「ここぞという時、逃げない」「怒りも、時には解決のきっかけになる(130頁)」「にもかかわらず『やる』と決意する(133頁)」などといったパラグラフはロジャーズ三原則の極意のようなものへのゆるやかな連なりを感じる。
 
教科書的に無条件受容、共感的理解、自己一致などといった概念を頭で理解しても、それは一体具体的にはどういった態度なのかを生き生きとイメージできなければ実際の人間理解の役には立たないでしょう。そういったイメージを豊かにする上で本書の河合先生の語りは有益な示唆を与えてくれています。