かぐらかのん

心理学関連書籍、ビジネス書、文芸書の書評などを書いていきます。

書評

「こころの病に挑んだ知の巨人(山竹伸二)」を読む。こころの問題の本質に迫る。

こころの病に挑んだ知の巨人 ──森田正馬・土居健郎・河合隼雄・木村敏・中井久夫 (ちくま新書) 作者: 山竹伸二 出版社/メーカー: 筑摩書房 発売日: 2018/01/26 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る 日本が世界に誇る5人のセラピストの業績の比較…

「羊と鋼の森(宮下奈都)」の感想。「生きられなかった半面」を生きていくということ。

調律はまず49番目のラの音を440ヘルツに合わせるところから始まります。 そして、それを基準として12の音階を88の鍵盤に割り振っていく。 ただ、調律が普通の家電製品のメンテナンスとは明確に違うのは顧客の求める「理想の音」というのが顧客の数だけ無数に…

「あなたはそのままで愛されている(渡辺和子)」を読む。特異的な「きらめき」に向き合う覚悟。

あなたはそのままで愛されている 作者: 渡辺和子 出版社/メーカー: PHP研究所 発売日: 2018/04/06 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る 一昨年に89歳で帰天された「置かれた場所で咲きなさい」の著書、渡辺和子シスターのまさかの新刊です。 未発…

「批評理論入門(廣野由美子)」を読む。批評という「〈他者〉の物語」の中に「〈私〉の物語」を見出す営み。

批評理論入門 『フランケンシュタイン』解剖講義 (中公新書) 作者: 廣野由美子 出版社/メーカー: 中央公論新社 発売日: 2014/07/11 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る * 「読む」ということ、「語る」ということ。 小説の読み方には、文字通り…

「フロイト入門(中山元)」を読む。いまだにフロイトが読まれるべき理由。

フロイト入門 (筑摩選書) 作者: 中山元 出版社/メーカー: 筑摩書房 発売日: 2016/05/27 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る * なぜいまフロイトなのか? 我々は自らを理性ある存在として「我思う、故に我あり」とデカルト的に自分自身を理解す…

「保健、医療、福祉、教育にいかす簡易型認知行動療法実践マニュアル(大野裕)」を読む。「認知行動療法=ポジティブ思考」という誤解。

保健、医療、福祉、教育にいかす 簡易型認知行動療法実践マニュアル (きずな出版) 作者: 大野裕,田中克俊 出版社/メーカー: PHP研究所 発売日: 2017/02/15 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る * 簡易型認知行動療法というアプローチ 保健、医療…

「発達障害(岩波明)」を読む。「自閉症」と「自閉症スペクトラム障害」の違い。発達障害における「個性」と「特異性」。

発達障害 (文春新書) 作者: 岩波 明 出版社/メーカー: 文藝春秋 発売日: 2017/03/17 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る * 「自閉症=自閉症スペクトラム障害」か? 発達障害の理解を困難にしている理由の一つにその概念のわかりにくさがありま…

「『今、ここ』に意識を集中する練習 心を強く、やわらかくする『マインドフルネス』入門」を読む。何気ない日常を輝きに満ちたものに変える53の習慣。

「今、ここ」に意識を集中する練習 心を強く、やわらかくする「マインドフルネス」入門 作者: ジャン・チョーズン・ベイズ 出版社/メーカー: 日本実業出版社 発売日: 2017/09/01 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る 結構、誤解されている向きも…

「美しい人をつくる『所作』の基本(升野俊明)」を読む。「心を整える」には、まず「形を整える」。

bookmeter.com 禅が教えてくれる美しい人をつくる「所作」の基本 感想 枡野 俊明 - 読書メーター 「心穏やかに生きる」。これほど言うは易く行うは難き事もそうないでしょう。我々はいつも周りの状況に振り回され、様々なものに囚われて、怒ったりイライラし…

「医者が教える食事術(牧田善二)」を読む。老化の原因「AGE」とは何か?糖質制限の誤解とは?

bookmeter.com 医者が教える食事術 最強の教科書――20万人を診てわかった医学的に正しい食べ方68 感想 牧田 善二 - 読書メーター 副題に「最強の教科書」と銘打っているように、そろそろ、健康診断の数値が気にはなり出したが、食生活のどこから改善すればい…

「自分でできる対人関係療法(水島広子)」を読む。伝える「内容」は妥協せず「伝え方」を最大限工夫する。

bookmeter.com 自分でできる対人関係療法 感想 水島 広子 - 読書メーター 対人関係療法(IPT:Interpaersonal Psychotherapy)とは、もともとは、うつ病の治療法として開発された経緯があり、その後、摂食障害や社交不安障害、PTSDなど様々な精神疾患に対す…

「疾風怒濤精神分析入門(片岡一竹)」を読む。ジャック・ラカン的生き方とは何か?

bookmeter.com 疾風怒濤精神分析入門:ジャック・ラカン的生き方のススメ 感想 片岡 一竹 - 読書メーター 衒学的な理論と独特な語り口で、精神分析のみならず現代思想の領域においてもカリスマ的人気を誇るジャック・ラカン。死後40年近く経った今でも、毎年…

「精神分析の四基本概念(ジャック・ラカン)」を読む。「欲望」と「享楽」の峻別と調和。

絶版本を紹介する事に一体いかほどの意味があるのかという疑念もありますが、これだけの名著が絶版のままというのはあまりにも惜しいわけです。従って、世の中に一つの需要を示すという意味で、こういう紹介文も一応の意味はあるかとは思います。 *****…

「カードキャプターさくら(CLAMP)」を読む。いろいろな「好き」の共生。「愛されたい」と「愛している」の違い。

「カードキャプターさくら」という作品はご存知でしょうか?1996年から2000年まで「なかよし」に連載され、本来の読者層である小中学生女子のみならず幅広い層を熱狂させ、その一世を風靡。その後も人気は全く衰える事が無いどころか、年を追うごとに着実に…

「こころの最終講義(河合隼雄)」を読む。自己実現という円環。「物語」の崩壊と再構築。

こころの最終講義(新潮文庫) 作者: 河合隼雄 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2014/09/05 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る 京都大学での最終講義を含む河合隼雄先生の講演集です。各講義はばらばらの機会にされたものですが、全体を通じて…

「愛することは許されること(渡辺和子)」を読む。「置かれた場所で咲きなさい」の著者による新訳聖書入門。

「私が私であるということ」。これを「アイデンティティ」と言いますが、何を持ってアイデンティティとするかは極めて難しい問題です。河合隼雄氏は米国の発達心理学者エリク・H・エリクソンの「個人として社会にコミットすること」というアイデンティティ概…

「『老いる』とはどういうことか(河合隼雄)」を読む。「自己実現」としての老い。

「老いる」とはどういうことか (講談社+α文庫) 作者: 河合隼雄 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2014/03/14 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る 読売新聞でのコラム連載を基にした110編と免疫学の多田富雄氏との対談。河合先生のエッセイの中…

「置かれた場所で咲きなさい(渡辺和子)」を読む。「愛されたい」から「愛してる」への生き方の転換。

昨年暮れに89歳で天寿を全うされた渡辺和子シスターの言わずと知れたベストセラーです。文章は論旨明晰。シンブルな言葉ながらその文体は凛としていて美しい。 渡辺和子さんという人は9歳だった昭和11年、あの二.二六事件において僅か1m先の眼前で陸軍大将だ…

「昔話の深層(河合隼雄)」を読む。「無意識」と格闘する事で実り多き人生が拓けてくる。

昔話の深層 ユング心理学とグリム童話 (講談社+α文庫) 作者: 河合隼雄 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2013/09/27 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る 本書は「ヘンゼルとグレーテル」「いばら姫(眠れる森の美女)」といった、あのグリム童…

「カウンセリングを語る(河合隼雄)」を読む。包み込む母性原理と切り離す父性原理。

カウンセリングを語る(上) 作者: 河合隼雄 出版社/メーカー: 創元社 発売日: 2015/03/26 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る 本書は四天王寺カウンセリング研修講座の講演録です。聴衆は主に学校の先生方で、当時は校内暴力が社会問題化してい…

「君の膵臓をたべたい(住野よる)」を読む。生の欲望と出会い損ないの物語。

原作が出た時、満開の桜の表紙と猟奇的なタイトルの不思議な組みあわせに少し心惹かれましたが、その時は結局読まず終い。ただずっと気にはなっていた作品でしたので、今夏に公開された映画をきっかけに原作の方も手を出してみました。 12年後の【僕】が物語…

「カードキャプターさくら・クリアカード編(CLAMP)」1〜3巻を読む。華々しいバトル。煌びやかな日常。そして、堆積していく謎。

およそ20年前、多くの年端もいかない女の子達、そして「大きなお友達」を、尋常でない熱狂の渦中に叩き込み、そして彼ら彼女らのその後の人生に多大な影響を与えたと言われる作品がありました。そうです、CLAMPさんの不世出の名作「カードキャプターさくら」…

「スタンフォード式最高の睡眠」を読む。良質な睡眠の鍵は「深部体温」にあり。

著者はスタンフォード大学の精神科教授。スタンフォードは睡眠研究のメッカとして知られます。1953年のレム睡眠の発見以来、いち早く睡眠医学の可能性に注目。1963年、世界初の本格的な睡眠研究機関「スタンフォード睡眠研究所」を設立。1989年に初めて睡眠…

「寝ながら学べる構造主義」を読む。構造主義をまとめて横断的にざっくりと知ることができる一冊。

現代思想系の記事や、アニメの批評記事なんか読んでると、たまに何気に出てきませんか?「構造主義」っていう言葉。なんとなくわかるようでよくわからないモヤモヤ感がありますよね。 構造主義は、実存主義との対比という文脈で語られることが多く、その場合…

「自信がなくても幸せになれる心理学」を読む。褒めると人は輝く。そして、その輝きはあなたに返ってくる。

本書はハインツ・コフートの自己心理学の入門としては現時点での決定版ではないでしょうか。和田先生はコフートの入門書を何冊か著されていますが、本書はともかく実践に重きが置かれている。人を褒めるのに苦手意識を感じる人へお勧めです。 「褒めてはいけ…

「発達障害の時代とラカン派精神分析」を読む。自閉症圏への精神分析的アプローチの可能性を探る。

自閉症というカテゴリーについては、かつてはスキゾフレニー(破瓜型統合失調症)の早期発症、あるいは精神遅滞と混同されていた時代もありましたが、時代の変遷と共にこれらから切り離され独自の領野を形成してきたという歴史があるわけです。 自閉症を特徴…

「腸内フローラ10の真実」を読む。「お腹の調子を整える」だけではない。腸内フローラに秘められた可能性。

腸内フローラ(腸内細菌叢)というのは腸内における善玉菌、悪玉菌、日和見菌の棲み分けのことをいいます。 彼らはバラバラに住んでいるわけではなく、種類ごとにグループを形成して暮らしています。その様はまるでお花畑のように生態系を形成しているため、…

斎藤環「引きこもりはなぜ『治る』のか?」を読む。あとラカン的〈他者〉の欲望と「エロマンガ先生」について。

本書は引きこもりの臨床という極めて限定した領域を扱った本と見せかけて、普通の対人関係においても活用できることが多く書かれており、実用書的な価値も高いです。 また具体的な臨床実践を通じた精神分析理論のガイダンス本としても読めるので、精神分析っ…

ブルースフィンク「精神分析技法の基礎」を読む。我々はいつも理解しようとするから誤解する。

本書はラカン派精神分析の臨床技法を扱ったものです。そういうと、なんかものすごく専門的な狭い領域のように思えますけど、「臨床」っていうのはつまるところ、人と人の関係する場を言うのであって、精神分析やカウンセリングの場にとどまらず、日常的なコ…

向井雅明「考える足ー『脳の時代』の精神分析」を読んで。脳科学時代のアンチテーゼとしての精神分析理論。

メンタルヘルスの諸問題につき、何かにつけ「脳科学的には・・・」といえば、なんとなく納得してしまう昨今の風潮ではあります。 本書の言うところの「脳中心主義」とはすべてのこころの問題は脳の構造によって決定されているかの如き説明です。例えば、統合…